vol.3 その弐(その壱から読んでね)


●俺の話を聞け。
東寺に行くために、一度京都駅に戻る。歩いていける距離なので、歩いていこうということに。
ただ、駅に戻るバスの中で「寺田屋に行きたかったけれど、もう時間がないので諦めて、東寺に行ってから拝観時間を気にしなくても良い伏見稲荷に行こう」という話をどんにして、どんも聞いていたはずだった。
が、歩く私にどんがかけた言葉は、信じられない一言だった。
「次、池田屋だっけ」
ハァァァァ?!
お前、人の話聞いてたか?池田屋って?私はこの旅の中でただの一言も池田屋とは行っていないぞ?新撰組の屯所に行くとは行ったが池田屋とは言っていない。竜馬ゆかりの地の寺田屋に行くと言ったが池田屋とは言ってない。つーか、どっから池田屋って出てきたよ?池田はあんたんとこの親玉だろうが!と、怒鳴りつけたい気持ちを(これでも)ぐっと堪えてやっぱり怒ってしまう。
「人の話聞いてた?寺田屋に行かないって言ったの。これから東寺に行くの。五重塔があるの。高野山の弘法大師ゆかりの寺なのはアンタも知ってるでしょう。そこに行くって説明したのになんで聞いてないの?!池田屋ってどっから出てきたのよ!」
どんがびっくりしたような顔をしたが、すぐに顔が険しくなる。
「そんなに怒らなくてもいいじゃん!説明されても言葉が足りないから分からないよ」
「分からないのは聞く気がないからじゃないの?」
それでも人目を気にして抑えて口論している最中、目に飛び込んできたのは、創価学会、京都にある会館。
マジで。これ、マジです。暮れなずむ空に輝く緑の電飾看板。会館の前で「池田」屋発言とは、どんよ、お前も学会員よのぉ。
会館名も覚えていないが、確かに学会の文字。よっぽど、どんをそこに預けて一人で旅しようと思ったことか。というか、これは嫌がらせか?
会館の近くで学会員夫と喧嘩。これぞアンチ嫁のクオリティ。
(余談だが、帰ってきて場所を手がかりに会館名を調べようとしたのだが、見つからない。狐に騙されたのか私は?幻想でも見たのか私は?ということで京都駅の近くにある会館をご存じの方いらっしゃいますか)
険悪なまま京都二カ所目の世界遺産、東寺へ。
閉館時間も迫り、もう堂の中には入れないとのことだが、ご厚意で庭に入り建物の周囲だけ無料で見せていただけることに。
私は東寺は二度目だが、どんは初めて。険悪な空気も忘れて、また興味深げに見入っている。
暢気なものだ。
バスで東福寺へ、JRに乗り換え伏見稲荷へ。ここは私の希望で、あの鳥居の列を見たかったのだ。
空はもう夕焼け。ずらりと続く朱赤の鳥居に、機嫌の戻ったどんと、やや不機嫌な私。
鳥居の中を歩く。一昨日から歩いてばかりだ。上ったり下ったり。人生とはそんなものか?
それにしても、この鳥居の数。人々の強い思いを垣間見たような気がする。たくさんの神や仏が存在するこの国は、一見筋が通っていないように見えて(どこぞの学会の妄信的な方もよくそうやって日本を揶揄されますが)、実はとても信心深い国ではないだろうか。
信心深いという言葉も適切ではないのかもしれない。身近に、生活の中に、神や仏が存在している。それを当たり前のこととしてこの国で生きる、そういう国なのだと思う。
だから自己主張の激しいどこぞの(中略)は、この国にそぐわないのではないだろうか。
いや、逆に、そういう国だからこそどこぞの(中略)は布教できるのであって、もしこの国が一神教の国ならば、今ほどの規模になっていないような気がする。
結局、許容されているのに「迫害日本」「精神後進国日本」とごね続けていらっしゃる。
壮大な反抗期の子どもだと、以前のブログで書いたなあ。

●先斗町哀歌
JRで京都駅まで戻る。バスに乗り込むが、路線を間違えてしまったらしい。
どんが勘付く。こういう時だけは勘が良い。
結局、ホテルへ一番近いバス停で降りるも結構歩く羽目に。
どんがぶつくさ言い出す。キレる私。「バスの路線も分からない奴が文句を言うな」
どんがもし、分からないなりに調べてくれるなら文句も言わない。人のプロデュースに乗っかるだけの人間に文句を言う資格なんかないのだ。ないのだったらないのだ。あややはきっとつんくに背かない。
ホテルにチェックイン。今日は普通のホテル。要潤に似たフロントの男性の120%の笑顔に釘付けになる。
ホテルで少し休んで、夕食は先斗町へ。
ここで恥を一つ、披露。
「先斗町」は「ぽんとちょう」ですが、「せんとちょう」と読んだ人が居ます。私です。すみませんでした。
このMacのATOKだってあっさり変換しやがりました。
その先斗町の古い洋食屋で夕食。まだシーズンだったので川床で食べられることに。やや機嫌が戻る私。鴨川の風に吹かれながら、私はオムレツ、どんはハンバーグ。
食後、また少し歩いてバーの川床でまったり。大人だ。大人の夜だ。その時、バーのオリジナルカクテルの名前を先斗町ナントカ(名前失念)をせんとちょうと読んでしまってバーテンダーに言い直されたのが私。
哀しい。哀しい夜だ。私には京都の大人の夜は遠いのだ。南座も笑っている。どんも笑っている。お前は笑うな。
帰りがけ、鴨川の河原を歩く。カップルがチュウをしている。その中で殺伐とした空気を放つ私。
どんがおどおどと聞いてくる。
「なんかさ、言葉に刺があるんだけど、喧嘩売っているの?」
「喧嘩を売る余裕があるように見える?」
「………」
「私だって楽しみたいですけれどもね、慣れない土地で迷わないように必死なのに、人の話をまるで聞かない人間を連れて旅行しているものですから。いいのよ?明日から別行動でも」
「いいよ、それでも」
ブチ(←キレた)
「そもそも誰を楽しませる為に私が一生懸命なんだと思いますか?あんたがこういう場所を巡るのが大好きだから、いろいろ考えているのに」
「………スミマセン」
日常でもそうなのだ。いろいろ考える私に、のほほんとしたどんに。それはそれで上手くいくのだろうが、こっちがイッパイイッパイの時は脆い。
そもそもどんはリードするのが苦手なのだ。元カノとの付き合いだって、男性がいろいろプロデュースすることに期待されるのが重荷だったらしい。「だって華ちゃんは自分でしたいことを主張してくれるから、楽?」確かに言いたいことを言って、その希望が通らなかったことはないが、それにしてもどん、乗っかりすぎ。
しょぼんとしたどんと鴨川をとぼとぼ歩く。言葉に刺があったことは事実ではある。でも謝らない、私は謝らないぞう!
ホテルへの帰り道、コンビニで入浴剤と「休足時間」を購入。にしてもよく歩いた、よく喧嘩した。ああ楽しかった。
まあ、パートナーのいる人生というのはそういうものなのだろう。

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旅行記も後二日分。こればかり続くのも何なので、そろそろ別の話題も差し込みつつ、書いていこうと思っています。
よろしく?。



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1.清水寺。
2.ここは何年坂なんだっけ?
3.三十三間堂。走り抜けたのはR.田中一郎(しつこい)
4.東寺
5.東寺の猫。餌をやってはいけません旨の看板アリ。
6.五重塔。
7.夕日に輝く伏見稲荷。
8.BGMは安全地帯、気分は真田広之、お酒のCMでしたっけ?
9.先斗町。賑やかな夜。
10.せんとちょうと読んでしまってすみませんでした。
11.鴨川、カップルがイチャイチャ。私は殺伐、どんはおどおど。

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7食目 お昼ご飯はお茶漬けバイキング(写真なし)
8食目 老舗洋食屋さんの定番メニュー。