vol.3 その壱

くろしおを一本早めたために、空いた席に振り分けられ、どんと席が離れる。
久しぶりの一人の時間を思い思いに過ごす。
MP3プレーヤーのイヤホンを耳につっこみ、車窓を眺めたり眠ったりしているうちに、新大阪駅へ。
そしてどんと合流。ここで新幹線に乗り換えて京都へ行く。
「俺の後ろの席のおばちゃん二人組が話してたんだけどさあ」
「何?」
「学会トークを。というかアンチ学会トークを。なんかね、おばちゃんの妹夫婦が学会員なんだって。でね、その夫婦の家に行くと学会の話しかしないから、とうとう誰も行かなくなっちゃったってさ」
「あらあらあらあら」
「で、でもさ、『しっかりした考え方なんやけどぉ』って」
「それは言っていないでしょ」
「……すみません、おばちゃんは誰も行かなくなったとしか話していませんでした」
「無駄なフォローはしなくてよろしい」
「はい」
場所が変わっても、その手の人はどこにでもいる。
妄信学会員・迷惑学会員は一部の人だなんて、その一部って具体的に何人だろう。結局は全国にどこにでもいるような気がするのだが。

エスカレーターの上り口を間違えて上がったホームは指定席付近。
しかしもう発車してしまうので、近くの乗り口に飛び込む。スーツケースをガラガラ引っ張りながら車両の廊下を自由席まで進む。すぐ降りるのだから良いんだけど。
どんがブツクサ言っている。普段が文句を言われる方なのでここぞとばかりに、である。
つーか、仕切りを人に任せているどんが間違えた私に文句を言うなんぞ一千万年早いと自分勝手に開き直り。
空気がやや険悪に。旅の風物詩、喧嘩、そろそろ勃発か。

13時頃には京都駅に到着。何度来てもでかいぞ京都駅。一度ガメラだかにたたき壊されたのも京都駅。その新しい駅ビルオープン当時、ここの劇場でジャニーズの連続公演あった。1日2回(か3回だっけ?)公演数ヶ月。今にしてみればずいぶん過酷なスケジュールで公演をしていたなあ、なんて。
これをきっかけに辞めたJrもいれば、辞めそうに見えてガッツリ残ってデビューしたJrもいる。雑誌のインタビューで「本当は公演が終わったら辞めて美術系の学校に行くつもりだった」と語っているのを読んだ。人生はどう転ぶか分からない。話もどう転ぶか分からない。なんで私がこんな話を知っているのかも触れてはいけない。過ぎた話だ。

荷物のデリバリーサービスで荷物だけ先にホテルに移動。
人間はまだ土地勘は掴めないまま市内観光へ。
まずは、市内バスにのり、京都の定番、清水寺へ。
バス停を降りて清水寺を目指すものの、どうやら正面の道ではないらしい。私たちの乗ったバスは清水道に止まるルートではなく、東山五条に止まるルート。両方、清水寺へ行けるけれども、道順が違う。
そういうわけで墓地の中心を進む羽目に。
ところで、その墓地の中で一際目立つのは太平洋戦争で出征して亡くなられた方々の墓。目にするたびにハッとする。どんは時々そういう方の墓の前で足を止める。
高野山の奥の院でもそうだったが、意識しない中に突然「かつて日本は戦争をしていた」という事実を突きつけられているようだ。
二人、考えながら上り坂を進む。

●巡る世界遺産
三カ所目の世界遺産、京都一カ所目の世界遺産、清水寺。
高所恐怖症のくせに高いところにあえて歩むどん。清水の舞台の柵に近づいては離れ近づいては離れ。そんなどんをほっといて、私は参拝しつつ写真を撮りつつ。清水の舞台といえば究極超人あーる。……そんな懐かしい話はさておき、昼食はガイドブックにあった、「お茶漬けバイキング」なるものに。
私の好物の阿闍梨餅を購入後、少し迷って到着。お茶漬けといいつつバイキングなのは漬け物。それを乗せてズルズルとお茶漬けを頂く。季節のご飯やお粥もあったりする。
全種類をトライするどんと、大根系だけを選ぶ私。少々持たれ気味の胃も落ち着いたところで、次の目的地へ。
ところで、参道で舞妓に扮した観光客とすれ違ったのだが、本物の舞妓だと信じた男がいた。どんである。
料金を払って舞妓の扮装をして写真を撮るという店があることを、知らなかったらしい。ガイドブックにあれだけ掲載されていたのに。ここで新事実発覚。こいつ、ガイドブック読んでない。
京都の旅は私が調べたのだが、やはりまるっと乗っかるつもりだったらしい。
「次はどこ?」
「三十三間堂」
実は、少し前に次の目的地を話したのだが、聞いていなかったらしい。
慣れない土地で苛つく私に少しずつ投入される燃料。短気な私、耐えられるか?!

人多過ぎでバス停で降りられないというハプニングを越えつつ、三十三間堂到着。実は私は京都は何度か来ている。とはいえ慣れない土地には代わりはない。地図を握りしめての緊張の移動である。
日は傾き、閉館時間は迫っているのである。ここは効率よく回りたい。
そんな私の後ろを、どんはのほほんとついていく。
もうちょっと、どんを頼りがいのある男に書いてあげたいが、実際にのほほんとついてきていたので仕方がない。諦めろ、どん。
さて、三十三間堂と言えば究極超人あーる。……そんな懐かしい話は再びさておき、この場所でのどんの反応は楽しみである。
ご存じの方もたくさんいらっしゃると思うが、あの仏像の数。1001体の千手観音。さらにその最前に並ぶ様々な仏像。
案の定、どんがのけぞった。
私のことさえも忘れたかのように熱心に見入っている。
ところで、この仏像の中に知り合いに似た人がいる、と言われているそうだが、確かに一人、同僚に似た仏像を発見。その同僚はそもそもが仏顔なのだが。

vol.3その弐へ続く